October 16, 2022

大澤巴瑠 個展 " ⌘C + ⌘V " 開催

この度、アートプロジェクト集団『WATOWA GALLERY』は、2022年10⽉30⽇(⽇)より WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO (東京都台東区今⼾1丁⽬2-10 3F)にて大澤巴瑠(おおさわはる)による個展 " ⌘C + ⌘V "(command CV)を開催いたします。

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「command CV」とは、PC上でイメージや⽂字情報をコピーアンドペーストする際のショートカットキーのこと。

「command C」はコピーを、「command V」はペーストを意味する。⼤澤は⾃⾝の制作スタイル、プロセスをこの⾔葉で表現し、本展のタイトルとした。

その創作プロセスはユニークで、コピー機で⾃⾝の描いたものをコピーし、あるいはコピー機に直接インクを垂らして⽣まれたイメージをコピーし、それを印刷⾊であるCMYKの4⾊を⽤いて⾁筆で模写(ペースト)するというものだ。地の⾊の銀箔は、コピー機でコピーする際の発光を表現している。

コピー機によるコピー、そしてさらに⾝体を介した模写という、⼆段階による複製⾏為が⾏われているわけだが、コピー機によるコピーが完全なる複製になるかと⾔えばそうではなく、意図しないズレが⽣じたり線が⼊ったりという「バグ」が起こる。そしてさらにそれを⾝体をもって描いているため、それは複製⾏為でありながら、決してまったく同じものとはなり得ない⼀回性をもった創造⾏為となる。

複製と⾔えば、ヴァルター・ベンヤミンが『複製技術時代の芸術作品』において、複製可能な芸術作品は時間的、空間的⼀回性、「いま」「ここ」にひとつしか存在しない作品にある「アウラ」が消失するとしたが、⼤澤の複製⾏為は、複製⾏為によってしか⽣じ得ないわずかな「バグ」や「ズレ」を際⽴たせることにより、作品に時間的、空間的⼀回性を持たせており、むしろ複製によって「アウラ」を⽣じさせていると⾔えるのかもしれない。

そう、⼤澤の作品は、複製でありながら複製でないというパラドックスを孕んでいるのだ。それは同時に、⼤量⽣産、⼤量消費というものに対して、あえて複製⾏為をもって対抗したアンチテーゼともとれる。

コピーアンドペースト「command CV」によってあらゆるイメージを簡単に複製できる時代に⽣まれた、⼤澤独⾃の「command CV」を、本展を通じてご覧いただきたい。



プロフィール


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⼤澤 巴瑠  Hal Osawa


1997年東京都⽣まれ、以前までの作品は⼀度描いたものをコピー機に通し、印刷したものを描くという作品を制作してきた。⼤量⽣産の象徴のコピー機。ここに⾃らバグを⽣じさせるという⾏為を⾏ってきた。ここから展開し、コピー機の露光を⾏うガラスの部分に直接インクを垂らし「描く」と「印刷」を同時に⾏った。これにより、引きずる⾏為そのものを可視化することが可能となり、⾝体と機械が分離していたところを⼀体化させた。
銀箔の下地により光を⽀持体にし、CMYKを⽤いることによりコピー機の印刷⼯程を⽰唆している。



主なグループ展

2017年  中央本線画廊 字と図展
2020年  Galerie Aube HOP 展2020
2021年  SkiiMa Gallery In between
2021年  ⻄武渋⾕ SHIBUYA STYLE vol.15
2022年  ARTDYNE 『はじまれり』
2022年  東京都美術館 KUA ANNUAL 2022「in Cm | ゴースト、迷宮、多元宇宙
2022年  代官⼭ヒルサイドテラス 「⼆次元派展」 【主な個展】
2022年  medel gallery shu 『ERROR』


■ 批評⽂:沓名美和

⼤澤巴瑠は他者とのコミュニケーションで起こる誤解や理解のズレを、複製という⾏為の不完全さから⽣じるイメージのズレに置き換え作品に落とし込んでいる。

その過程は⾮常にユニークで、デジタルで制作した原画をコピー機で複製し、さらにそれを⼿本とした複製画を⾁筆によって制作するというものだ。コピー機による印刷は対象物とそれを焼き付ける光、そして操作する⾏為者が三位⼀体となって⾏われるため偶発的な変化が⽣じやすく、厳密に⾔えばデジタルと同じものを複製することはできない。さらにそれをキャンバスに貼った銀箔とCMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、墨)によって⾁筆で模写していくため、ますますオリジナルのデータから乖離したものが出来上がる。デジタルとアナログの複製を繰り返す事で、複製でありながら原画から徐々にズレていくその過程こそが⼤澤の着眼点であり、⼤量⽣産できる装置を使い唯⼀無⼆のものを作りだすことで 物の価値や意味を問いかけている。

⼤澤が原画の複製に使⽤するコピー機は、戦後のポップアートが批判した⼤量⽣産・⼤量消費を象徴するもののひとつであり、ペーパー レ スの進んだ現代においては過ぎた時代の象徴でもある。デジタル画像を瞬時にコピー&ペーストできる現代において、イメージや情報を複製することはますます容易くなったがその⼀⽅で、例えば単純な「ありがとう」という⽂字情報が発信者の意図と異なって伝達され、安易な複製によって拡散していくことも⽇常茶飯事だ。

⼤澤の描くモチーフには、iPhoneの絵⽂字やシンプル図形など⽇常で⽬にするとくに⼤きな意味を持たない「なんでもないもの」が恣意的に選ばれている。それが複製の過程で陰影やゆがみを与えられ変形していく過程は、意志のない偶然性(⼜は意志を持った⾏為)によ ってものの形が変化し、新たな意味性を与えられていく様⼦をありありと再現している。不⾃然に歪んだモチーフや引き延ばされたインクの形は原画とはかけ離れているものの、そこには妙な可笑しみや造形美があり、もはや複製ではなく唯⼀性を持った存在として変化していることに気づかされる。




開催概要



タイトル:

"大澤巴瑠 個展 " ⌘C + ⌘V ""

会期:
2022年10⽉30⽇(⽇)〜11⽉13⽇(⽇)12:00-19:00
※ 休館⽇│2022年11⽉1⽇(⽕)、11⽉8⽇(⽕)

会場:
WATOWA GALLERY / THE BOX TOKYO
東京都台東区今⼾1丁⽬2-10 3F

⼊場料:
観覧料 500円 (税込)〜
*⾃⾝で⾦額を決定するドネーションシステム(ミニマム 500 円から⼊場 料を⾃⾝で決定し、それが若⼿ アーティスト⽀援のためのドネーショ ンとなるシステム。アーティスト⽀援と国内アートシーンの活性化を ⽬的としたアートアワード WATOWA ART AWARD 2022 EXHIBITION に 寄付されます。